婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
奈子はため息をついた。
「オルデンバルネフェルトを処刑したオランイェ公マウリッツは、彼が慕っていたウィレム一世の息子だったんですね。なんだか悲しくなりました」
宗一郎が顔をしかめる。
「マウリッツも悪党ではないよ。軍事的才能があって、スペイン軍に占領されていた都市を次々に取り返した。まあそういう意味では、俺はどちらかといえば、オルデンバルネフェルトよりマウリッツを目指すべきかもしれないな」
奈子はきょとんとして宗一郎を見上げた。
「どうして? あなたは、鬼灯宗一郎さんでしょ。私の好きな人です」
宗一郎が口を引き結ぶ。
奈子は本を閉じ、立ち上がって棚に戻した。
「奈子」
振り向くと、宗一郎が奈子を真っすぐに見つめている。
「俺と結婚してくれないか」
奈子は目をまたたいた。
訝って宗一郎に近づく。
いったいなにを言いだすのだろう。
「たぶん、もうしてますけど」
宗一郎が腕を伸ばし、奈子の左手を取った。
膝の間に奈子を引き入れ、懇願するように見上げる。
「奈子、俺はきみと結婚がしたい」
奈子はハッと息をのんだ。
宗一郎の手の中に、いつの間にか指輪が握られている。
アームの曲線が美しいプラチナのリングで、結婚指輪と同じダイヤモンドを真ん中に、二粒のエメラルドが飾られていた。