婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
奈子はきっと抗えない。
今なら宗一郎は、ただドアを開けるだけでいい。
宗一郎の手が髪をくしゃくしゃにもてあそび、くすぐるように腰をたどって、奈子の肘を掴む。
そして、そっと体を離した。
つむじや目の下にキスを降らせながら、アイスクリームみたいに溶けた奈子がひとりで立てるようになるのを待つ。
奈子の頬が真っ赤になっているのを見下ろして、宗一郎は満足そうに笑った。
「でも、忘れないでくれ。婚前契約書によれば、俺ときみは一年以内に子どもをつくる。きみはそれに合意したはずだ。あと何回キスをしたら、奈子は俺を好きになる? 俺も気の長いほうじゃないんだが、それまでは待ってるよ」
ようやく息の整った奈子を引き寄せ、またキスをする。
「おやすみ、奈子」
いたずらっぽくささやいて、ひとりでベッドルームに入るとドアを閉めた。
廊下にぽつんと取り残される。
今すぐそのドアを開けたくなるのをなんとかこらえて、奈子は両手で顔を覆った。
(い、いじわる……!)
好きでもない相手に、奈子がこんなキスを許すと思っているのだろうか。
宗一郎にあおられた火が肌の下でくすぶっている。
もうこれ以上ごまかせないことはわかっていた。
きっと今にも弾けてあふれ、逃げることもできなくて、奈子ひとりでは持て余すようになる。
宗一郎が、そのときを待っている。
奈子はギュッと口を引き結び、絶対に眠れないとしても、今夜だけはゲストルームに閉じこもっていようと決めたのだった。