婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
冬の匂いが宵の口を漂う。
白い弓張月を飾るように、ビルの隙間で星がふたつ輝いていた。
まだ定時を過ぎたばかりで、烏丸証券のエントランスも混み合っている。
日葵がくれた入籍祝いを腕に抱え、顔認証ゲートを通り抜けた奈子は、もう一度うしろを振り返った。
「ほんとに大丈夫?」
日葵と樹が揃ってうなずく。
ふたりとも、肩と肘にプレゼントをぶら下げていた。
すべて奈子が上司や同僚から贈られたもので、今夜はたまたま宗一郎と待ち合わせしていると伝えたら、ふたりが車まで運んでくれることになったのだ。
烏丸証券に奈子の結婚を知らない人はいない。
記事のおかげでべつの部署の友だちや支店にいる同期からも連絡がきて、偶然すれ違った役員にまで声をかけられ、奈子は恐縮しきりだった。
相手がホーズキの社長とあっては、みんな気をつかってくれたのだろう。
「だって、鬼灯宗一郎に会ってみたいし」
日葵が潔く好奇心を認める。
樹はもう少しだけ控えめだった。
「なかなかお目にかかれないですからね」