婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
立ち尽くしている奈子を見つけ、宗一郎が近づいてくる。
「おかえり」
ほほ笑んで奈子を見下ろし、うしろにいるふたりに目を向ける。
奈子はハッとして振り返った。
ふたりともぽかんと口を開けて固まっている。
「夫の鬼灯宗一郎さんです」
まだ慣れなくてぎこちない言い方だったけれど、日葵も樹も、宗一郎に圧倒されて気づいていない。
奈子は宗一郎にもふたりを紹介した。
「同期の日葵と、後輩の樹くん。入籍祝いをたくさんいただいたので、運ぶのを手伝ってくれたんです」
先に立ち直ったのは日葵のほうだった。
背すじを伸ばしてにっこりと笑う。
「ご結婚おめでとうございます。奈子の友人の壬生日葵です」
「ありがとうございます。奈子の夫の宗一郎です。これからも妻をよろしくお願いします」
外面のいいふたりがそつなく挨拶を交わす。
樹がすっと宗一郎の前に立った。
「奈子さんの後輩の樹です」
奈子はこっそり日葵と目を合わせた。
日葵が微かに首をかしげる。
さっきまでぶるぶる震えて宗一郎を怖がっていたくせに、いったいなにを考えているのだろう。
「はじめまして、鬼灯宗一郎です」
宗一郎はそうとはわからないくらいさりげなく奈子をそばに引き寄せた。