婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
樹が右手に持っていた袋を差し出す。
「ご結婚おめでとうございます。これは僕から、おふたりにお祝いです」
「わざわざご丁寧にありがとうございます」
宗一郎がお礼を言って受け取る。
なんとなく、奈子はそわそわして落ち着かなくなってきた。
ほとんど理解できないことだけど、隣にいる宗一郎が、奈子が誰かに連れ去られるのを警戒しているみたいに、すぐ手の届くところに置こうと振る舞っている気がする。
ほかのプレゼントをすべて車に積み終えてしまうと、樹がにこやかに笑って宗一郎に言った。
「僕、奈子さんには本当にいつもお世話になっているんです。だから泣かせないでくださいね、これからは」
宗一郎の右眉がピクリと上がる。
奈子は慌てて夫の腕を引っ張った。
「ふたりとも、本当にありがとう。また会社でね」
樹から宗一郎を引き離したくてぐいぐいと追いやったが、反対に助手席に押し込まれてしまった。
宗一郎が車に背を向け、ふたりとなにかしゃべっている。
奈子はハラハラしながら見守った。
あまり長引くようならもう一度降りようかと思ったけれど、宗一郎もすぐに運転席側に回ったから、たぶん改めてお礼を言っただけなのだろう。
宗一郎がドアを開け、隣に乗り込んでくると、奈子はほっとして息をついた。