婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~





澄みきった夜のさなか、冬はきらきらと輝いていた。

宗一郎が奈子を連れていったのは都内にある水族館だった。
まるでふつうの恋人のように手をつないで、青い水の下を歩く。

幻想的なライトアップの中、宗一郎がときどきかがみ込んでユーモアのある感想を耳打ちするのを、奈子はくすくすと笑って聞いた。
十九時のイルカショーもちゃんと見たし、おみやげにサメのぬいぐるみも買った。

それからおなかを空かせた宗一郎が魚を食べたいと言いだしたので、奈子はまた笑って、帰り道に海鮮のおいしい小料理店に寄った。

宗一郎が八雲京と一緒に時折顔を出す店だそうで、掘りごたつ式のカウンター席に座って店主と気さくに話す横顔を見つめていると、どうしてか奈子は胸がきゅっと苦しくなるのだった。

ふたりで同じ家に帰り、玄関のドアを開ける。

「ただいま」

奈子がなんとなくつぶやくと、すぐ隣から返事が戻ってくる。

「おかえり」

サメのぬいぐるみを抱きしめた奈子は、顔を上げて宗一郎をじっと見た。
宗一郎が手を伸ばし、奈子の肘を支える。

奈子はつま先立ちになってすばやくキスをすると、くるっと背を向けてリビングに駆け込んだ。

宗一郎も笑っていた。
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