婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
奈子はギュッと手を握って、ついにドアをノックした。
途端に引き返してしまいたくなる。
迷惑かもしれない。
困らせたらどうしよう。
疲れているだろうし。
べつに、そういうつもりじゃないけど。
ただいつまでもゲストルームに閉じこもっているのは、ふつうの夫婦らしくないと思っただけ。
大丈夫、きょとんとされたら戻ればいい。
なかったことにする。
なんなら、今すぐ。
頭の中がぐるぐると回って、緊張で目眩がする。
「どうぞ」
奈子が半ば逃げだしかけたとき、宗一郎の低い声が答えた。
それだけで、呼吸の仕方も忘れてしまう。
奈子は震える手でベッドルームのドアを開けた。
ヘッドボードを背にした宗一郎が、膝に乗せたノートパソコンから顔を上げる。
「どうした」
奈子はとっさに後悔した。