婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
「ごめんなさい、仕事中ですか」
そうに決まっている。
昨日も今日も、奈子のためにたくさん時間をつかってくれたのだから。
ひとりではしゃいで、バカみたいだ。
さっさと引き返したほうがいい。
「いや、今終わったところ」
宗一郎がパソコンを閉じて、ナイトテーブルの上に置いた。
奈子はドアノブを掴んだままうしろに退がる。
「あの、おやすみなさいって言おうと思って。今日はありがとうございました、楽しかったです。宗一郎さんも、なるべくゆっくり休んでくださいね。また明日」
用意していた言い訳を全部並べ、すばやくドアを引く。
「奈子」
胸をきゅっと掴むような声に呼び止められ、奈子は逃げられなくなった。
思考は一時停止して指の先まで固まっている。
心臓さえ、今は宗一郎のために動いていた。
「部屋に入って、ドアを閉めるんだ」
魔法の呪文に支配されたみたいに、奈子は命令に従ってベッドルームに足を踏み入れた。
ドアを閉めてうつむく。