婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~

部屋は息苦しいくらいに静かで、むせ返るほどの甘い匂いが漂っている気がした。

宗一郎がベッドに座ったまま、じっと奈子を見つめている。

「おいで」

奈子は息を止めた。
体の横でギュッと両手を握って、おとなしく進み出る。

カーテンの隙間から覗く細い月の光が、境界線みたいに宗一郎との間に差し込み、奈子のつま先を照らす。
すると、奈子はそれ以上ベッドに近づけなくなってしまった。

部屋の途中で立ち尽くし、眉を寄せて泣きそうになりながら顔を上げる。
宗一郎が困ったように笑った。

「きみ、ほんとにかわいいな」

奈子の頬がパッと赤くなる。

宗一郎はためらうことなく境界線を越え、奈子を迎えにきてくれた。
小さく丸まった奈子の指を優しくほどいて、おでこにキスをする。

魔法が解かれ、奈子は両腕を伸ばして宗一郎の背中にしがみついた。

宗一郎が笑って髪をなでる。
そっと顎を持ち上げられ、奈子は背伸びをした。

キスをして、見つめ合う。
それからまたキスをする。

宗一郎の指先が耳や首すじや鎖骨をたどっていき、そのあとを唇が追いかけた。
大きな手に裾のほうを引っ張られ、シルクのガウンが床に滑り落ちる。
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