婚前契約書により、今日から私たちは愛し合う~溺愛圏外のはずが、冷徹御曹司は独占欲を止められない~
それから宗一郎は、本当は奈子にどんなことをしたいと思ったか、ひとつひとつささやいて実行した。
さっきは"大事にする"と約束したから、そうしたまでだったのだ。
つまるところ、宗一郎が満足したのは窓の外がすっかり明るくなる頃だった。
「ちょっとムリをさせすぎたな」
スーツを着た宗一郎がネクタイを結びながら戻ってきて、ベッドの端に腰掛け、シーツに丸まってぐったりしている奈子の頬にキスをする。
ナイトテーブルには熱々の紅茶を入れたポットと、温められたカップが置いてあった。
「許してくれ。きみが回復するまでそばにいたいところだが、そろそろ佐竹が迎えにくる。ゆっくり寝ているといい。冷蔵庫に朝食を入れてあるよ」
奈子は小さくうなずいた。
いったいどんな体力をしているんだろう。
あんなことをしたあとで、奈子はまだアイスクリームみたいに溶けた体を持て余しているのに、宗一郎のスーツ姿はすっかり完璧だった。
でも本当は奈子が朝ごはんを作りたかったし、コーヒーを入れてネクタイを結んで、仕事に向かう宗一郎をちゃんと玄関まで見送りたかった。
宗一郎が立ち上がって背中を向ける。
奈子はせめて力の入らない腕を伸ばし、スーツの袖をギュッと掴んだ。
「……いってらっしゃい」
それだけなのに、宗一郎はうれしそうに笑ってくれた。