学園怪談
 廊下を見渡しても誰もいない。となりの教室からでもない。そして、サヤは廊下の片隅に埃を被っている非常用の降下装置のボックスに近づいた。
 箱は長年放置され続けたのか、全く人が触れたような痕跡はなかった。
それでも、サヤは耳をボックスに当て、中の物音を慎重に聞いた。
……ズッチャ、ズッチャ、ズッチャ、ズッチャ。
サヤは恐る恐る、ボックスのフタを開けた……。

 ……。
「そこには、脱水症状で意識のなくなりかけためぐみさんが居たのさ。しかも彼女はボックスの中に入っている降下装置……っていっても、よくある布の大きいやつだけど、それに包まれていたんだって。下手したら窒息していたかもしれないね」
 徹さんの話を聞いて私は犯人の悪行に憤りを感じた。
「ひどいことをしますね。それで犯人は捕まったんですか?」
 しかし、徹さんはニヤニヤしながら言った。
「見つかる訳ないじゃないか。言ったでしょ、ボックスは埃まみれで誰も触れた形跡がなかったって。つまりね、めぐみさんはまるでワープでもしたかのようにボックスの中に閉じ込められたのさ」
「えええ! でも、そんなことが……」
「後から調べた事なんだけど、その降下装置でね、過去に事故で男子生徒が一人死んでるんだ。いじめの道具として、複数の生徒がある生徒をその中に放り込んだ結果だったんだってさ。それから、その付近ではすすり泣きとか、助けを呼ぶ声が聞こえるようになった。非常階段が作られてからは装置を誰も使わなくなり、長年放置されてきたんだ。めぐみさんがいなくなった日は、事故で少年が死んでからちょうど50年目の命日だったんだよ」
 50年。半世紀という長い時間に、死んだ生徒の怨念は膨らみ続け、最後には生きた関係ない人間を襲うにまで至った。
 人は人を傷つけ、憎み、呪う。この負のエネルギーが凝縮されれば、どんな恐ろしいことだって起こってしまう。
 徹さんの話を聞き終えると、みんなの視線が一斉に私に注がれていた。
「え? どうかしましたか?」
 そして、最後の怪談へのバトンが……今、手渡されようとしていた。



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