彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
…スイーツ対決は負けた。
さすがに男の子。
嫌いなものでも大食いできるらしい。
自信あったのになぁ。
これで3連勝の夢は潰えたけれど、花札だけは絶対に勝ちたい。
あれだけ将和さんに特訓してもらったのだ。
負けたくない。
隣家で待っている将和さんに負けたと報告したくない。
意地と女のプライド…ってわけじゃなくて、
実は花札勝負で健斗に勝ったら、将和さんからご褒美を貰う約束をしているのだ。
目の前の人参に飛びつかないはずはない。
ご褒美は私が決めていいって聞いて俄然やる気になっていた私だ。
「次は花札勝負よっ!」
「花札ね、ふーん」
「ふーんてナニ、もしかしてやったことあるとか?」
まずい、初見じゃなかった?
そうなると私の勝ちはかなり厳しいものになる。
やだやだ、私は勝って将和さんからご褒美をもらうんだから。
健斗の様子を窺うと、あいつはにやりと笑った。
「なんだよ、勝ち越したら何か買ってもらう約束でもしたとか?親父は麻由子に甘いからな」
うっ、と答えに詰まる。
ご褒美の相手はおじ様じゃなくて将和さんだけどね。
「負けてやろうか?」
「はあ?冗談じゃないわ。そんな不正をしてもらったご褒美なんて一生後悔するでしょーが」
ムキになって言い返すと健斗がぷっと吹き出した。
「やっぱりなんかもらう約束してたんだな。で、何ねだってるの?」
ああ、またひっかかっちゃった。
いつもコイツの誘導に簡単に引っかかってしまう。
「それは秘密。とにかく正々堂々と私は勝ちたいの」
さあ、尋常に勝負だっ!
さすがに模試の前に長時間遊んでいてはいけないから12回戦うところを省略して1回だけの戦いだと言うと、「はいはい、長くやると負けちゃうもんね」とせせら笑う。本当に可愛くない。
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「勝ちましたっ!ご褒美お願いしますっ!!!」
5分後、私は将和さんが待つ隣家の高橋家のリビングに飛び込んでいた。
「え、は、早かったね・・・」
驚く将和さんに「はい、速攻勝負をかけましたからっ!」にこりと笑顔を返した。
高得点を狙わず、健斗が役をそろえる前に勝負をかけたのだから早いに決まってる。
「ですから、ご褒美お願いします」
「うん、いいよ。頑張ったからご褒美だ。で、麻由子ちゃんは何が欲しいの?」
ソファに座る将和さんににじり寄ると、将和さんが私の頭をポンとした。
まるで子ども扱いだけどーーー負けない。
「ご褒美は将和さんの奥さんの座でお願いします」
そう言うと将和さんの口が”え”の形のまま固まったーーーー