彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
***


「ーーー麻由子ちゃん、ご機嫌悪いね」

「ええ、そうですね。そうです、そうです。そりゃあ機嫌も悪くなるってものですよ。わかりませんか、わかりますよね、ええ、おじ様のせいだなんて言ってません、全然。そんなことこれっぽちも思ってません。ご心配なく」

一ヶ月後、私は健斗の家のリビングでケーキのやけ食いをしていた。

「うん、ごめんね。でもさ、元々決まってたんだよ」

「ええ、ええわかってます。ですから、おじ様のせいじゃないって言ってるじゃないですか。私の機嫌が悪いのは将和さんのせいですから」

「あー、うん、でもなぁ、何となく麻由子ちゃんのこちらを見る視線が冷たい・・・」

「気のせいです!」

私はモンブランのてっぺんの栗にフォークをブスッと刺した。


「お前さ、一回り以上下の女子高生に逆プロポーズされてオッケーする三十路男ってやばいだろ。将和さんがまともでよかったよ、な、親父」

私の隣に座るが健斗が私のモンブランを奪っていった。

「何よ、健斗ったら。そういえばいつの間に甘いもの食べられるようになったのよ。三番勝負の時もスイーツ食べてたし。あれがなければ私が全部勝てた」

「麻由子が知らない間に俺も進化してんだよ。成長期にはたんぱく質と炭水化物だけじゃなくて適度な甘味が必要なんだよ。いろいろイライラするし」

へぇー。
私は次のケーキに手を伸ばした。
今度はブドウがメインのフルーツタルト。

「おい、興味がないなら聞くな」

パクパクと食べていると隣で健斗がむくれている。

「だって、ご褒美は私が望むものなら何でもって言ってたんだもん。話が違うわ」

ああ、腹の虫が収まらない。

将和さんはあれから直ぐに静岡にある子会社の一つに転勤になり、私を置いて行ってしまった。

ご褒美として『将和さんの奥さんの座』をねだった私に、かなり驚いていたっけ。
でも、今すぐ結婚して欲しいって言ったわけじゃなくて、私が二十歳になったら候補として考えて欲しいって言っただけ。
いくらなんでも私だって女子高生の私が直ぐに嫁にしてもらえるとは思っていない。もちろん今すぐだっていいんだけど。

二十歳になれば少しは私も大人っぽくなっていると思うんだ。
しっかり大人の女になっておくから考えて欲しいんだ。

それなのに将和さんは「おじさんをからかっちゃいけない」なんて言って全く相手にしてくれなかった。
子ども扱い。
確かに子どもだけど。
でも、恋愛する権利はあるはずだ。

「麻由子、本気?憧れてるだけじゃないの?」

本気に決まってると健斗をじろりと睨みつける。

「だったら、もう一度そう言ってみるかい?将和を説得してみたらどうかな。それでダメなら諦めて受験勉強に集中」

受験勉強
おじ様に痛いところを突かれてしまった。

成績は悪い方じゃない。でも、目標がなくてどうしたらいいのかわからない。こんな目的意識のない私が大学に入学していいんだろうか。
だらだらと流されたくないと言う思いだけが膨らんでいる。

将和さんが好きだという気持ちに嘘はない。
確かに玉砕しなきゃ諦められない。

会って話がしたいーーー



< 48 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop