彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
「後は彼がうまくやってくれるかが心配だが」
「それは大丈夫だと思いますよ。ずっと彼女のこと探してたみたいだし。離婚してからは特に何度も来日して彼女との思い出の場所に行っていたみたいだから」
高橋さんが即座に俺の心配を否定してくれる。
思い出の場所というのが横浜の山下公園や目黒川、長野県なんだろう。
「でも、別れてからずいぶん経ってるわよね。彼女の気持ちはどうなのかしら」
早希も心配そうに呟いた。
「離婚に時間がかかったのは奥さんに全ての事業をスムーズに引き継ぎするためだったらしいの。そもそも本来はそんなに財産を与える必要なかったのにけじめとして渡そうとしていたみたい。ただ葡萄園はレイフさんが祖父の代から受け継いできたものでそれを離婚するからといって奥さんに譲渡することはレイフさんの身内から大反対されたって」
「それはそうでしょうね。お身内からしたら思い出の詰まった葡萄園と縁が切れてしまうように感じてしまうでしょうし」
「結局、葡萄園はカーヴィン家の親族が続けるってことで決着してやっと離婚になったらしいの」
「・・・レイフさんのけじめって、なんだかちょっと人騒がせね。もっと早くけじめを付けて田所さんを探すべきだったような気がするし。それに奥さんは離婚に納得してたのかしら。いくら財産のほとんどをもらったっていってもお金と愛情は比較できるものじゃないでしょ」
「二人はもう10年近く別居していたらしいわ。でも私がパーティーで見かけた時は夫婦仲は悪そうには見えなかった。夫婦の問題だから別居していたからといって愛情がなかったとは言えないし、ただのビジネスパートナーに変化していたとしても周囲にはわからないようにしていたかもしれないからその辺はわからないけど」
目に見えることが全てだとは限らない。
特に政財界の集まりなんかでは当たり前のことだ。
仮面夫婦なんてたくさんいるし、笑顔の裏には憎しみしかないという人間もいる。
早希の目が悲しげに歪む。
それを見た高橋さんも顔をしかめチラリと俺に冷たい視線を向けたがすぐに表情を緩めて早希の肩を叩いた。
「そうね。でも当時のことはわからないけど今は大丈夫みたいよ。今じゃ離婚前より生き生きとしていて年下の恋人もいるらしいの。事業も拡大して先月香水メーカーを買収したらしいわ」
「それならいいんだけど」
「そんなことより」
高橋さんがぱんっと手を叩いた。
「早希の結婚式、来週に迫ってるんだから他人の心配なんかしてる場合じゃないわ。顔色くすんでるんじゃない?明日会社終わったらエステに行くわよ。リラクゼーション付スペシャルプランにしましょ。北青山のお店に予約ねじ込んでおくから」
二人の視線が俺に刺さる。
早希からはいい?と控えめな期待を含んだもの。
高橋さんからはいいわよねと半端ない眼力での圧力。
は?明日こそはゆっくり早希と外で食事をしようと思っていたのに。
このところの忙しさで先月から一緒に夕食を食べた日の方が少ない。
しかし、いつでも早希の支えになってくれている上に俺も彼女を巻き込んで迷惑をかけた自覚がある。
だから高橋さんの言葉には逆らえない。
「もちろんだよ。行っておいで」
そう答えるしかなかったーーー
「それは大丈夫だと思いますよ。ずっと彼女のこと探してたみたいだし。離婚してからは特に何度も来日して彼女との思い出の場所に行っていたみたいだから」
高橋さんが即座に俺の心配を否定してくれる。
思い出の場所というのが横浜の山下公園や目黒川、長野県なんだろう。
「でも、別れてからずいぶん経ってるわよね。彼女の気持ちはどうなのかしら」
早希も心配そうに呟いた。
「離婚に時間がかかったのは奥さんに全ての事業をスムーズに引き継ぎするためだったらしいの。そもそも本来はそんなに財産を与える必要なかったのにけじめとして渡そうとしていたみたい。ただ葡萄園はレイフさんが祖父の代から受け継いできたものでそれを離婚するからといって奥さんに譲渡することはレイフさんの身内から大反対されたって」
「それはそうでしょうね。お身内からしたら思い出の詰まった葡萄園と縁が切れてしまうように感じてしまうでしょうし」
「結局、葡萄園はカーヴィン家の親族が続けるってことで決着してやっと離婚になったらしいの」
「・・・レイフさんのけじめって、なんだかちょっと人騒がせね。もっと早くけじめを付けて田所さんを探すべきだったような気がするし。それに奥さんは離婚に納得してたのかしら。いくら財産のほとんどをもらったっていってもお金と愛情は比較できるものじゃないでしょ」
「二人はもう10年近く別居していたらしいわ。でも私がパーティーで見かけた時は夫婦仲は悪そうには見えなかった。夫婦の問題だから別居していたからといって愛情がなかったとは言えないし、ただのビジネスパートナーに変化していたとしても周囲にはわからないようにしていたかもしれないからその辺はわからないけど」
目に見えることが全てだとは限らない。
特に政財界の集まりなんかでは当たり前のことだ。
仮面夫婦なんてたくさんいるし、笑顔の裏には憎しみしかないという人間もいる。
早希の目が悲しげに歪む。
それを見た高橋さんも顔をしかめチラリと俺に冷たい視線を向けたがすぐに表情を緩めて早希の肩を叩いた。
「そうね。でも当時のことはわからないけど今は大丈夫みたいよ。今じゃ離婚前より生き生きとしていて年下の恋人もいるらしいの。事業も拡大して先月香水メーカーを買収したらしいわ」
「それならいいんだけど」
「そんなことより」
高橋さんがぱんっと手を叩いた。
「早希の結婚式、来週に迫ってるんだから他人の心配なんかしてる場合じゃないわ。顔色くすんでるんじゃない?明日会社終わったらエステに行くわよ。リラクゼーション付スペシャルプランにしましょ。北青山のお店に予約ねじ込んでおくから」
二人の視線が俺に刺さる。
早希からはいい?と控えめな期待を含んだもの。
高橋さんからはいいわよねと半端ない眼力での圧力。
は?明日こそはゆっくり早希と外で食事をしようと思っていたのに。
このところの忙しさで先月から一緒に夕食を食べた日の方が少ない。
しかし、いつでも早希の支えになってくれている上に俺も彼女を巻き込んで迷惑をかけた自覚がある。
だから高橋さんの言葉には逆らえない。
「もちろんだよ。行っておいで」
そう答えるしかなかったーーー