政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
チーズケーキがまだ綺麗な二等辺三角形のままお皿にあった時と同じ繰り返しになりそうになった。
けれど、柳原さんが私の言葉を遮る。
「一緒に過ごした時間のなかで宮澤さんの気持ちが変わったように、蓮見さんだってなにかしら変わったんじゃない?」
彼女は「変わった……変わった?」と自身の言葉に異を唱えて言い直す。
「私には、最初から蓮見さんには愛があったようにしか見えないから、変わったっていうのは違うかもしれないけど。あの日、部屋に入ってきて真っ先に、怪我をした宮澤さんに駆け寄った姿をすぐそばで見ていたけど……私には、心の底から大事な妻を心配しているようにしか見えなかったわ」
黙ってなにも言えなくなった私に、柳原さんは大きなため息をつき……。
「とりあえず、きちんと帰ってね。私と会ったあと家出したなんてなったら、私に疑いがかけられる。これ以上、蓮見さんの中の私のイメージを悪くしたくないってわかるでしょ?」
そう繰り返し言ったのだった。
柳原さんと別れたのは十三時。
彼女に再三言われたので、その足でマンションに帰った。元より家出しようなんて頭もない。
たくさん相談に乗ってもらったお礼を、あとで聞いた住所に送ろうと考えながら国木田さんと挨拶を交わし、エレベーターに乗り込む。
そのまま天井を眺め、そこに設置されている通気口に目を留めた。