政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
空調が合わないと体調を崩すのは昔からで、だから父は実家を建てるときにもそこはかなりこだわってくれていた。
私が苦しくないように。
私が、過ごしやすいように、と。
父のその思いは間違いなく愛情だったのだろうと理解している。
そんな父と同じように考え、理想に合うマンションを探し引っ越しまでした蓮見さんの中にも、私への愛情があると考えてもいいのだろうか。
それは、短絡的すぎるだろうか。
そんな考えを巡らせながら玄関をカードキーで開ける。
いつの間にかすっかり落ち着く場所となっていた部屋に入り、蓮見さんの靴に気付いた。
「え……」
今日は朝仕事に出て行ったし、午後休む予定でもなかったのにどうして……と思いながら、靴に留めていた視線を上げた途端、蓮見さんの姿がそこにあり驚く。
リビングに続く廊下の壁に右肩をつき寄り掛かった蓮見さんは腕組みをして私を見ていた。
無表情だけれど、怒っている気がした。
「どこに行ってた?」
「少しぶらぶらして、偶然柳原さんと会ったので、カフェで話を……連絡しないですみませんでした」
静かな怒りの理由がホウレンソウを怠ったことだと思い、謝る。
動揺だとか疑惑だとかショックだとか。私の中にそういうものが渦巻いていて連絡する気にならなかったにしても、そんなのは言い訳にもならない。
きちんと連絡を入れておくべきだった。