政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


正直、秋斗から『春乃はおまえに夢中になるかもな』とからからと笑いながら言われてから、少し頭を悩ませてもいた。

春乃は友人である秋斗の大事な妹だ。春乃がブラコンなら秋斗も立派なシスコンだ。下手な断り方はできない。

けれど、人がよく明るく、裏表のない秋斗の性格を思えば、春乃だって決して似ていないわけではないだろう。

中学生という年齢は論外なため正直顔をしかめたくはなるものの、それを除けば彼女は愛らしい顔立ちをしているとは思う。

秋斗にじゃれついてニコニコと笑顔を浮かべる様子は可憐で見ていて飽きないし、たった十四歳なのにどこか品があるのは育ちがいいからだろう。

ピンと伸びた背筋や清楚な佇まいは好ましいと言えなくもない。

だったら、あまりにしつこいようなら付き合ってみてもいいのかもしれない。

自分自身が恋愛に冷めている自覚はあるし、他からの評価も同じだ。恋愛に夢を見ていそうな思春期の春乃も、俺のそっけなさを知ればきっと自ら幕を下ろし離れていく。

それが一番彼女を傷つけないし、秋斗との関係もこじれない。
万が一、うまくいくようなことになればそれならそれでいい。

そこまで考え、常にいつかくるであろう春乃からのアプローチに備えていたというのに、結果的に、彼女が俺の前に姿を現したのは、それから十年近くが経ったあととなった。



< 184 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop