政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


もちろん、好きな人からずっと愛を囁かれたらそれはとても幸せだと思う。
女性にとってこれ以上ないとも思う。

けれど、私はそれよりも、大祐さんの人生を豊かにする存在でありたい。

おいしいご飯や笑顔の挨拶、あたたかい気遣い、明るいリビング……そういうものをたくさん、大祐さんの辿る道に添えて幸せを感じさせたい。

大祐さんのこれからを、照らす存在でありたい。
そう思い告げると、大祐さんは少し目を見開いてからふっと笑みをこぼした。

「そういうところなんだろうな。御園さんが、憧れていたというのは」

信号が青になる。
大祐さんは視線を進行方向に戻すと、ゆっくりとアクセルを踏んだ。

「春乃は、持っている情が大きいんだろう。それを目に留まった相手に配るにしても俺に向けるにしても、自分自身の器の中身がなくなるかもしれないというためらいがない。無償の愛と言えばわかりやすいか」
「他人への配慮だとか気遣いを言っているのであれば、大祐さんだって十分優しいし、過保護ですよ」

私も大祐さんに気を遣いたいと思い日々生活しているけれど、大祐さんのそれは常に私の上をいく。
それは少し悔しくも感じていたので指摘すると、大祐さんは淡々と答える。


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