政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「まず前提として俺が見返りなしに情を与えるのはおまえだけだし、たとえ有償だとしても情を向ける相手は選ぶ。切り捨てる人間も多い」
そうだろうか。
出会ってしばらくは私も大祐さんを冷たいと認識していたけれど、それは最近違うように思う。
柳原さんの件にしても、彼女の気持ちに薄々気付きながらも仕事の腕を認め依頼し続けたのは彼の優しさじゃないかと思う。
最初は〝彼女の気持ちはどうでもいい〟というような発言だけを見て冷たいと思った。
でもよくよく考えてみると、そこで切り捨てることもできたのにそうしなかった大祐さんは冷たいわけではないと思った。
だから、本人が言うほど冷淡なわけではないのだと伝えようか迷っていると、視線が重なった。
フロントガラスの向こう側には何十台ものストップランプが連なっていた。
「おまえは」と切り出した大祐さんが目を細める。
「とっくに俺の要にはなっているし、今までの人生での幸運を挙げるとすれば、春乃の存在以外にはない。だから、それ以上は考えずに大人しく俺の妻の座に座っておけばいい」
同居を始めた頃からは考えられないような柔らかい微笑みで言われ、うっかり見惚れてから笑みを浮かべた。