政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「はい。時間があったので」

本当は時間のない中かなり無理をして作ったのだけれど、こう答えておいた方が家庭的っぽいだろうと思い嘘をつく。良妻は隙間時間でパパッと作るはずだ。

今日からの同居生活で私が演じるのは、経済力だけで結婚相手を選びながらも家庭的な雰囲気を好み望む〝宮澤春乃〟。

あれもこれもと欲しがっている印象は否めないけれど、一応社長令嬢ではあるのでどれだけ矛盾したわがままを言っても蓮見さんは納得するだろう。
ついでに呆れて婚約破棄してくれたら万々歳だ。

世間一般的な〝お嬢様〟のイメージには昔から、〝わがまま〟がはびこっているのは嫌というほど知っていた。

「準備しておくので、必要なら着替えてきてください」

蓮見さんはなにか言いたそうにはしながらも「わかった」と、クローゼットのある寝室に入っていった。

今日の夕飯は牛肉を使った肉じゃがと、ブロッコリーとエビのサラダ、ワカメと野菜のスープ、それに十六穀ご飯。今後いつでも出せるようにと、常備菜として作ったひじきも並べる。

これぞ手料理!という私のイメージを具現化した食卓は、仕事後のなけなしの体力を振り絞っただけあり満足のいく出来だった。

〝家庭的〟を望まない蓮見さんは相当嫌がるはずだ。

栄養バランスを考えたメニューは精鋭ぞろいだけれど、中でも肉じゃがは牛肉派か豚肉派でわだかまりを残せる可能性もある。これ以上ないベスト選択だ。

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