政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「違います! その、そういう意味じゃ――」

不自然に声が止まったのは、蓮見さんに押し倒されたからだった。
ギシッと厚みのあるマットレスのスプリングが音を立てたと思った次の瞬間には蓮見さんに組み敷かれていて、状況についていけていない私は瞬きを繰り返すしかできない。

絞った照明により顔に影ができた蓮見さんが、数十センチ上から私をじっと見つめる。
ずっと無感情だった蓮見さんの瞳がオレンジ色の照明を受け光っていて、その中に写る自分にドキッとした。

「こういう意味じゃないのか?」

視線が重なったまま、ゆっくりと問われる。

彼の瞳に熱がくすぶって見えるのは気のせいだろうか。
涼しそうな綺麗な顔をしているのに、その眼差しだけは情欲の色を浮かべていて、じりっと焼かれたように胸のあたりが苦しくなった。

現状がうまく把握できずに戸惑うことしかできない私をしばらく見つめていた蓮見さんがふっと笑う。
彼の、挑発と色気が同居したような笑みに目を奪われる。

まずい、と直感が知らせたのは、ただピリピリと張り詰めていただけだった緊張にわずかな甘さが加わったことに気付いたからだった。

そして、蓮見さんの艶っぽい眼差しに足をとられ、逃げ出すタイミングを失った自分に気付いたから。

蓮見さんが放つ圧倒的なオーラに、ベッドに貼り付けられているように感じた。
身動きがとれないのに、心臓だけがうるさい。


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