政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「春乃の言う通りだな。結婚するなら同じベッドで眠るのも、体を重ねるのも当然だ」
「違……っ、本当にそういう意味じゃなくて……」

頬に触れられ、ビクッと体がすくむ。
触れる手は優しかったのにおおげさに反応したのは、蓮見さんが私に触るのは初めてだったから。

そんな私を笑った彼は、意地悪に口の端を上げた。

「こういう意味じゃないのなら〝新婚ごっこ〟だとか〝ままごと〟をするためにここに来たのか? 春乃がそうしたいなら付き合ってやらないこともないが……〝お嬢様〟には刺激が強すぎたか」

くっと喉で笑われ、それまで思考すべてを覆っていた戸惑いが飛んでいく。

どうせこの婚約は破棄になるのだから、ここで変な意地を張って応戦する必要はない。私は好きでもない相手とそういうことをするつもりはないとハッキリ突っぱねればいいだけだ。

冷静な自分がそう叫ぶのに、カッとなった頭にはそんな声は届かない。
ここで引くのは私の負けに思えた。

自分の悪い部分だとどんなにわかっていたって、一度ギアが入ってしまったら最後、もう止まれないのだ。

〝お嬢様〟だとか〝社長令嬢〟は、昔から私のストッパーを一撃で破壊する呪いの言葉だった。
それでも、祖父の言いつけを守り沈黙に徹することもあるけれど、負けず嫌いな私にはそれができないことも当然あり……今は後者だった。

挑発の意味で〝お嬢様〟と口にされた以上、黙ってなんていられない。

「蓮見さんの方こそ、出張だとか言い訳して早々に家を空けていたので逃げたいのかと思ってました」

じっと見上げて言った私に、蓮見さんはわずかに驚いた顔をしたあと、笑う。

「口が減らないな」
「私は最初からそのつもりでしたし覚悟もしてますから」

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