政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
決して口先だけじゃないと睨んでいると、蓮見さんの手が私の前髪を頭に撫でつけるので、その仕草に内心ドキドキする。
ひどく優しい手だった。
私と蓮見さんの間にはなんの感情もないのに、雰囲気が甘く色づいている気がした。
湿度が上がったしっとりとした空気に勝手に息があがっていく。
蓮見さんが甘やかすように私の耳や首筋に触れるので余計だ。
「経験は?」
「ものすごいあります」
見栄を張った私に気付いてかそうではないのか、蓮見さんは「それなら多少手荒にしても大丈夫か」と静かに目を細める。
手荒ってどんな……? まさかと思うけれど痛いやつ……?と内心焦る。
正直、立っていたら確実に後ずさっていたし、今だって緊張でどうにかなりそうだ。
それでも負けたくない一心で目を逸らさない私に蓮見さんがゆっくりと近づく。
そっと触れた唇に、心臓がドコドコと暴れていて飛び出してきそうで気が気じゃない。
そんな、キスに集中できない私を注意するように蓮見さんの舌が私の唇をなぞる。
「春乃。口」
……無理だ。無理。
こんな大人なしっとりとした空気なんて初めてで、視界も思考もぐるぐると回りっぱなしだった。
これ以上耐えられる気がしなくて悔しいけれど〝もう無理〟と白旗を上げようとしたところに、蓮見さんの舌が入り込んできて頭が真っ白になった。
重なった舌がわずかな水音を立て、一気にパニックになる。
「ん……っ」
咄嗟に蓮見さんの肩を押したけれど、びくともしないどころかより深く唇が重ねられる結果となり、呼吸する隙間もないほどしっかりとお互いの唇が合わさっていて息苦しい。