政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


洗面台の前でネクタイを締めていた蓮見さんは、チラッとだけ視線をこちらに向けてからすぐに鏡に戻した。

「もう終わる。少し待ってろ」

重なった視線に私はドキッとしたのに、蓮見さんはそんな様子も見せずに淡々と言うので、なんとなくムッとする。

「……はい」

朝食の場でも思ったけれど、昨日の今日でこうして目が合ったり話したりするのは、私は気まずい……というか、気恥ずかしい。
散々乱れた自分を知っているから余計に。

これが恋人だったら照れながらもにこやかに甘い雰囲気を楽しめるのだろうけれど、私たちは違うので、うまい立ち振る舞い方がわからない。

そんな私の悩みなんて知る由もない蓮見さんの涼しい横顔を眺める。

背筋が伸びていて姿勢がいい。
昨日までの半月は当然朝起きてからもひとりだったので、こうして蓮見さんがいるのは不思議な感覚だった。

それでも、この部屋にふたりきりという状況に違和感や緊張を抱かないのは、毎晩交わしたメッセージと昨日のことが原因かもしれない。

直接的な〝夫婦らしいこと〟は、そんなつもりはなくとも、たしかに蓮見さんとの距離を縮めていた。

肌を合わせれば相手のすべてがわかるなんてことはないけれど、伝わるなにかはあるのかもしれない。

昨晩、蓮見さんは情事のあと、いったいどんなつもりで抱き締めてきたのだろう。
〝夫〟としての義務感からだとしたら……と考え、胸の奥がザラッとした。

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