政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「そういえば、仕事は続けるのか?」
すぐに〝仕事〟なんて話題を出した蓮見さんに眉を寄せそうになりながらもうなずく。
「はい。続けます」
当たり前だというトーンで答えたものの、蓮見さんからしたらもうこのまま結婚するつもりでいるのだろうし、私が家庭に入ると思っていたのかもしれない。
私は〝経済力〟で結婚相手を選ぶような人間だと思われていることを考えればそれも当然に思えた。
わざわざ経済力で夫を選んでおきながら自分も働き続ける女性は多くないように思う。
……というか、蓮見さんは本当に今みたいな結婚生活でいいのだろうかと疑問を抱く。
好きでもない相手と寝起きをともにして、食卓を囲み、体を重ねて、そこになんの意味があるのだろう。それをこの先五十年、六十年続けるのかと思うとゾッとした。
無の時間が続くだけの地獄だ。
激動の人生を歩みたいわけではないにしても、私は、穏やかな波に心地よく揺られながら過ごしたい。
Yシャツ姿の横顔を見ながら、そんな味気のない淡々とした生活を希望している蓮見さんっていったいどんな人なんだろうとふと疑問に思う。
考えてみれば、彼のことは未だよく知らない。
とりあえず、すぐに出張に行ったところを考えると、他人が家にいても気にならないタイプなのはたしかだ。
神経質に見えるしパーソナルスペースを気にしそうなイメージを持っていただけに意外だった。