政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「でも、そんな細かいところに幸せの家族の象徴を見出すかな、普通。前から思ってたけど宮澤はいちいち夢見がちすぎるんだよな。さっき社長の娘って聞いて納得した」

「そういう見られ方するのが嫌だから同期にも隠してたんだよ。ひとりっ子とかもそうだけど、カミングアウトした途端に〝ああ、甘やかされて育ったのね〟って無言の上から目線を感じるっていうか。周りが持ってる固定観念の枠に収められちゃう感じ。あるでしょ、そういうの」

思い返してみても社長令嬢だと周りに知られてよかったことなんてただの一度もない。

たいてい、ちょっと気を遣われるようになったり、逆に聞きつけた途端にすり寄ってきたりで、ひどいときには『電車の乗り方とか知ってる?』や『別荘って何軒くらいあるの?』といった興味本位の質問をされた。

『いいなぁ』とひたすら羨ましがってくるクラスメイトへの対応は、こちらもひたすら困り続けるほかなかった。
どれも居心地はよくないので、言わない方がいいと判断し、就職を機に家柄は隠している。

ちなみにひとりで電車は乗れるし、別荘はご期待に沿えず申し訳ないけれど避暑地に一軒だけだ。

箱入りではないし、むしろ〝社長令嬢だから〟と色々言われるのを避けるために、様々なことをできるよう日々努力してきたので、その辺の同年代よりも生活力はあると自負している。

そんなわけで就職してからは誰にも話していなかったのに、それでも白崎に話したのは、バレたくない思いよりも聞いてほしい欲が勝ったからだ。

本部配属という理由もあり本音を隠さない性格もあり、一度大きな喧嘩もしているからというのもあり、同期の中で一番話しやすいのが白崎だった。

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