政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「ああ、あれうっとうしいよなぁ。すげぇわかる。俺がまさにひとりっ子ハラスメント受けてここまできたから」
「ちょっとわかるかも。白崎、ひとりっ子っぽいよね。マイペースだし自己肯定感が揺るがないし、愛情を一身に注がれて育ったんだなって思う」
「おいこら。そういう反応が嫌だって話だっただろ」

『こら』と言いながらも白崎はどうでもよさそうに笑って流す。
明るさも気安さも白崎の長所で、彼が人気があるのもうなずける。

とはいえ白崎も思ったことはなんでも声にするので、苛立つ場面も多いけれど。

「でも、まさかだったな。社長と同じ名字だとは思ってたけど、珍しいものでもないしスルーしてた。軽い気持ちで手出さなくてよかった」

白崎が食べ終えたお弁当をビニール袋に入れて口を縛る。
それを見ながら背もたれに体をあずけて息をついた。

「手を出すとか以前に、入社当初に泣かされてるけどね」
「飲み会の場での涙はノーカンだろ。それにあれは宮澤が突っかかってきたのが原因だし、俺はただ論破しただけだから。……ああ、でもあの頃から比べれば宮澤も随分素直になったかもな」

ははっとちっとも悪びれずに笑っている白崎に泣かされたのは事実だ。
飲み会で〝夢見がち〟や〝世間知らずっぽい〟と私に対しての印象を述べた白崎に頭にきて口論になった結果全部論破され、アルコールのせいもあり涙があふれた。

人前で泣くのは好きじゃないのに、アルコールが入ると涙腺が緩んでしまうらしい。自分が泣き上戸だと知ってからは自主的に禁酒している。


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