政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「昔から〝社長令嬢だから〟って目で見られることに過敏だったから、関連性の強いワードについ反応しちゃったんだよ。白崎がもとから誰にでもそういう態度をとるって知ってたら流してた」

父がCMを打つくらいの企業の社長を務めているという事実は、小学校低学年の頃まではただただ鼻が高かった。

周りから〝すごいね〟と言われるのも、家や部屋や持ち物を褒められるのも嬉しかった。
でも、年齢が上がるにつれ、どんどん息苦しさを感じていくようになった。

周りから、私個人ではなく〝レイドバッグホームズ社長令嬢の宮澤春乃〟という見られ方しかされていない事実をじわじわと知ったからだ。

とくに高等部の担任は、〝レイドバッグホームズ〟でマイホームを建て、その際うちの父が口利きをしたこともあり顕著だった。

父のことは大好きだ。
でも、どこにいても父の付属品としてしか見られない現実は、どれだけ楽しく過ごしていてもふと思い出され、そのたびに真綿で首を絞められているような、静かに水の中に沈められていくような、もがいてもどうにもできない苦しさを連れてきた。

体調を崩しやすいと知られれば〝お嬢様だから〟。
世間知らずな面を露呈すれば〝お嬢様だから〟。

逆に、礼儀正しいのも行儀がいいのも、料理ができるのも同じ理由で片付けられ、そこに私の努力はないとされる。

生まれつき持っている技術や力量なんてみんなそう変わらないのに、どうして私がなにも頑張らずそういったものを取得できたと思うのだろう。

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