政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
友達が何気なしに笑顔で言う『春乃はそういうところお嬢様って感じするよね』という軽口に、次第に笑顔を返すのがつらくなっていったのはいつからだっただろう。
そんな気持ちから、相手の言動から少しでも〝お嬢様だから〟というニュアンスを感じ取ってしまうと過敏に反応してしまうのだ。
昔からの悪い癖だった。
席を立ち食器の載ったトレーを返却口に置いてから食堂を出ると、ゴミを捨てた白崎が隣に並んだ。
午後一で白崎の顧客が打ち合わせにくるので、白崎もこのままモデルハウスに来るようだ。
打ち合わせは、よほどの事情がない限りはモデルハウスの一室で行われるのが通例となっている。
「そういえば、一度ここに顔を出したお兄さんには犬みたいにじゃれてたよな。一度気を許した相手には素直になれるってことか」
私の性格を見事言い当てた白崎に「そんな感じ」と返す。
「そういえば、宮澤が俺に懐いたのも飲み会で喧嘩した後からだもんな。なるほど。わかりやすいやつだな」
「白崎には別に懐いてない」
兄の秋斗は、祖母の故郷であるドイツに兄が十三歳から十八歳まで住んでいた。
兄は大学入学を機に帰国したのだけれど、離れていた期間が長かったぶん、兄と私はお互いにシスコンブラコン気味だ。