愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
うつむいて唇を噛みしめていると、「寿々那」と呼ばれる。
その声はいつもと変わらず低く落ち着いたものだけれど、わたしは顔を上げられなかった。膝の上でスカートを握りしめている自分の手を睨む。

「寿々那が何を思ったのか分からなくもないが……俺はこれから一生おまえしか抱くつもりはない」

「えっ…」

聞こえた言葉に思いきり顔を上げると、漆黒の瞳とぶつかった。濡れた烏羽のように艶やかなそれが、まっすぐにわたしを射抜く。

「いや、ちがうな。―――寿々那しか抱かない、だ」

わたしは息を呑むと、彼は「ふっ」と笑った。

「というか普通、夫が抱くのは妻だけだろう?俺は自分の妻以外に目を向ける気はないし、よそで欲求を満たそうとは思わない」

「でも……」

「確かに、おまえを抱けないのがつらくないと言えば嘘になる。正直、我慢している部分が大きい」

「っ、」

やっぱりそうなんだ、と思った。
頭で分かっていても、本人の口からそれを聞くのはやっぱりショックだ。

「だけど。だからと言って、お腹の子を危険にさらしてまでしたいとは思えないし、具合の悪いおまえに無理をさせたくない。それに、寿々那は俺の子を身ごもったから、こんなにつらい思いをしているんだ。なのに他の女で欲求を解消するなんてありえないだろう」

「祥さん……」

そこまで考えていてくれたなんて。胸が熱くなって、さっきとはちがう意味で目が潤みだす。
膝の上でスカートをギュッと握ったまま唇を震わせていると、頭の上にポンと大きな手が乗せられた。
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