愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「どうした。早く食べないと溶けるぞ」

言われてハッと手元を見ると、ビワのシャーベットが端から溶けかけている。慌ててスプーンですくって口に運んだ。

「なにか気になることでもあったのか?」

「いえ……幸は今頃どうしてるかなって思っていただけです」

「ああ、幸なら大丈夫だ。陽大(はると)君とずいぶん仲よくなったらしいぞ」

「もしかして、晶人さんからですか?」

「ああ。正確に言うと、晶人君経由で希々花さんから、だ」

祥さんの説明に、なるほどとうなずく。

結婚後初めて妹夫婦と顔を合わせたとき、彼らはお互いの連絡先を交換していた。まだ晶人さんが『Tohma(トーマ)グループホールディングス』に勤めていた頃だ。

年が近かったこと。お互いの仕事に興味があったこと。
それ以外にも意外と馬が合ったようで、ここ数年は、森乃やの経営のことで晶人さんの相談に乗ることもあるという。

若女将の仕事が忙しくて手が離せなかったのかもしれないけれど、だからと言って自分より八歳も年上の旦那様を使うあたりが、甘え上手の希々花らしい。

「そうですか……寂しがっていなければよかったです」

「ああ。お姉さんらしく湊大(みなと)君の世話をしてくれるから助かるとも言われたよ」

「そうですか……」

妹夫婦の下の子、湊大君は二歳。いつも人形相手にお世話ごっこをしている幸には、格好の弟分だろう。
お姉さんの顔をした幸が、小さな子のお世話をしているところを見てみたい。

それが弟か妹だったらどんなに――。

「寿々那?」

「え、はい!」

急に呼ばれたことに驚いて返事をする。

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