愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「さっきからどうしたんだ。酔ったのか?」

「えっと……大丈夫。お腹がいっぱいでぼうっとしていただけですから」

お腹をさすりながら言い、照れ隠しに「ふふっ」と笑っておく。

素敵は料理と雰囲気につられて、少しだけ日本酒を飲んだ。
相変わらずアルコールには弱いけれど、色々なお酒を少しずつ口にしているうちに味が少しずつわかるようになってきた。近頃は味見をするのが楽しみだったりもする。

「そうか。それならいいが」

祥さんはそう言って、なにかを確かめるようにわたしの顔をじっと見つめてくる。
どうかしたんですか? と尋ねようとしたとき、

「疲れているんじゃないのか? すまないな。ずっと留守をしていたせいで、幸のことを任せっぱなしにして」

眉をやや下がり気味にして申し訳なさげに言う彼に、「いいえ」と首を振る。

「謝らないでください、祥さんはお仕事なんですから。それにわたしは妹みたいに働いているわけじゃないですから」

にこりと微笑んでみせるが、彼の眉はまだ元の位置に戻らない。

「ハーブ講座の方も、結構忙しいんじゃないのか?」

「それは……おかげさまで。でも半分趣味みたいなものですし、楽しく務めさせていただいてますよ?」

実は去年の秋から、『ホテルKAGETSU』のイベントでハーブの育て方や活用の仕方を教える講座を開くようになっていた。
『森寿々那』の名前で講師をしているので、ほとんどのスタッフはわたしが社長の妻だとは知らない。

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