愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
最初は月に一回、第一日曜日だけ。参加者が集まらないときは、従業員で興味のある方が参加してくれ、アットホームな雰囲気だった。

そのうちに口コミやSNSからじわじわと申込みが増え、幸が入園したのを機に講座数を増やし、この一か月は週に二回ほど平日昼間に講座を持っていた。

家事代行会社から来てくれていた井上(いのうえ)さんは、現在我が家の専属ハウスキーパーになっていて、色々と手伝ってくれるから大助かり。幸もよく懐いていて、ふたりでのお留守番も慣れたものだ。

「そうか。無理をしていないならいいが」

納得してもらえたことにほっと胸をなでおろしたら、すぐさま次の言葉が飛んできた。

「じゃあほかになにか、心配事や気がかりでもあるんじゃないのか?」

「え?」

「ここのところ、たまに心ここにあらずだぞ」

不意に投げかけられた問いに、ドキッと心臓が跳ねた。
気づかれていたんだ……。

「希々花さんも言っていたぞ」

「希々花が? なにを?」

「『悩みがあるときの寿々姉は、無口ぼんやり無理やり笑顔』――だそうだ」

「えぇっ!」

「たしかにな、と思ったよ。さすが妹だな」

まさか希々花に自分のことを把握されていたなんて。

案外希々花を見くびっていたのかもしれない。いくつになっても手のかかる、天真爛漫な妹だと思っていたから。

でもそうだ。よく考えれば希々花だって来年は三十歳なのだ。きっとわたしの知らないところで色々なことを経験してきたはず。とくにこの数年は、母として若女将として、経験値をぐっと上げたに違いない。

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