愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「それで、どうなんだ? なにかあるならきちんと言ってほしい」

「それ、は……」

なんと切り出したらいいのだろう。
ずっと考えてきたことだけど、いざ口に出そうとすると喉の奥に引っかかったみたいに言葉が出てこなくなるのだ。

「それとも俺に言えないことか?」

挑むような視線に真っすぐ射られる。わたしに悩み事があると確信している目だ。
その目から逃げるように視線をさ迷わせた。

彼が海外での仕事を終えて戻ってきたら、きちんと話そうと考えていた。
そう心に決めたら、なんとなく家族の顔や生まれ育った場所を見たくなったのだ。

膝の上で両手をぎゅっと握り締め、思い切って顔を上げる。

「わかりました。きちんとお話します」

決意を込めた私の口調に、祥さんが一瞬だけ目を見張る。

「でもここじゃなくて……ふたりきりになれる場所でお話ししたいです」

そう言ったわたしに祥さんがうなずいて立ち上がる。彼に続いてわたしも立ち上がろうとしたら、足元がふらりとしてよろけた。
とっさに祥さんが支えてくれて事なきを得、ほっと胸をなで下ろす。どうやら気がつかないうちにお酒が回っていたみたいだ。

「ありがとうございます」とお礼を口にしながら顔を上げた瞬間、ふわりと体が浮いた。

「きゃっ!」

「日本酒は足にくるからな」

そう言って不敵な笑みを浮かべた祥さんは、わたしを横抱きにしたままスタスタとバンケットルームを後にした。

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