愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】

『歩けるから下ろしてください』という訴えは、見事に却下。

どうか、社長が妻を“お姫様抱っこ”で運んでいるところを、誰にも見られていませんようにと祈っているうちに部屋についた。
途中、何度か視界の端に人影が映ったのは気のせいだと思いたい。

部屋に入ったら下ろしてくれるかと思いきや、彼が下したのはわたしが履いている草履だけ。そのまま彼は和室を通り抜け、奥のベッドルームへと直行した。

和の空間となじみのよいロータイプのフロアベッドに私を下すとすぐ、祥さんは和室の方へと戻る。ほどなくして水の入ったグラスを持って戻ってきた。

「ほら。飲んで」

グラスを手渡され、お礼を言ってから口をつける。瞬間、スーッとした清涼感のある香りが鼻に抜けた。あとからかすかな酸味が口に広がる。

「おいしい……。このレモンミント水、もしかしてローズマリーも入っていますか?」

「正解。さすがだな」

満足そうに微笑んだ祥さんは、全客室にこのリフレッシュウォーターを置くことを教えてくれた。

妊娠初期の頃、彼がわたしのためにレモンミント炭酸水を作ってくれたことを思い出す。
彼はあれからずっとわたしのことを大事にしてくれている。それは子どもが生まれてからもなにひとつ変わらない。

ううん、さらに愛情深くなった。
生まれた娘のことを溺愛しつつも、甘やかすだけでなくダメなところはダメときちんと言う。(さき)も、そんなパパのことが大好きだ。

< 219 / 225 >

この作品をシェア

pagetop