外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「美鈴?」
前から窺うように名前を呼ばれて顔を上げたとき、晶さんの腕に捕まった。
正面から両手を回され抱き寄せられる。
「大丈夫か? なんか、疲れてるように見えるけど」
出会った頃から変わらない、晶さんから香るエキゾチックな香水の香り。彼のぬくもりとこの香りに包まれるだけで自然と鼓動は高鳴ってしまう。
「すみません。大丈夫です」
いろんなことに思い悩んでいるのが、きっと顔や態度に出てしまっているのだろう。気をつけなくてはいけない。
「そうか。でも、少し休んだほうがいい」
「はい、ありがとうございます」
「こんなときになんだが、帰ってきたら話そうと思ってたことがあるから聞いて。今月末、フランス大使公邸で開かれるパーティーに顔を出すことになった。美鈴にも妻として同伴してもらいたい」
「私が……?」
突然の申し出に思わず訊き返す。
結婚をする際、夫婦として公の場に出てもらうこともあるとは聞いていたけど、大使公邸でのパーティーだなんて緊張してしまう。