外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「横に立ってくれているだけでいいんだ。でも、フランス語は話せると言ってたもんな」


 モルディブで出会ったとき、フランスに滞在している期間があったと話した。フランス語は一応話せると言ったことを、覚えてくれていたようだ。


「わかりました。妻として恥ずかしくないよう、精一杯努めさせていただきます」


 抱き寄せる腕を緩めて、晶さんは私の顔を覗き込む。


「なんか、距離のある言い方だな」

 そう言ってフッと笑い、頬に手を添えた。

 傾けた顔が近づくのを目の前に見ながら、いつものように瞳を閉じられない。

 気づけば両手で控え目に晶さんの胸を押し、キスをされるのを拒否していた。


「ごめんなさい」


 目も合わせずそれだけを言い、包囲する腕から抜け出す。

 晶さんがどんな顔で私を見ているのかも確認しないまま、逃げるように自室へと入っていた。


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