外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「──すず? 美鈴」
遠くの方から名前を呼ばれて、意識が引き戻されていく。
ゆっくりと瞼を持ち上げて見えたのは、私を覗き込むようにしているスーツ姿の晶さん。
すぐに働かない頭で今の状況を必死に考えて、ハッと一気に目が覚めた。
「あっ、お帰りなさい」
沈むように背もたれに倒れていた体を慌てて起こす。
晶さんから少し遅くなると連絡をもらって、帰宅を待とうとソファに腰を下ろしてテレビを眺めていた。
そのうちに、どうやらうたた寝をしてしまったようだ。
「ごめんなさい。私、いつの間にか寝て……」
「先に寝ていても良かったのに、待っていてくれたのか」
晶さんからのメッセージには、確かに先に休んでいて構わないと書かれていた。
でも、夕食を用意して帰宅を待っていようと思ったのだ。
それなのに、うっかり寝て起こされるなんてどうしようもない。
「こんなところで寝ていたら風邪をひくだろ」
晶さんは私の頬を両手で包み、仕方なさそうに微笑を浮かべる。
その優し気な表情にどきりとした。