外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
フランス大使公邸でのパーティーの話をされたあのとき、私からキスを避け変な空気になってしまってからもう数日。
その後、晶さんは何事もなかったように私と接してくれている。
もちろん、どうしてあんな態度を取ったかも訊いてこない。
散々謝ろうかと考えていたけれど、あまりに普段通りでそのタイミングを完全に失ってしまっている。
「そうですね。気をつけないと」
うっかり風邪でもひいたら、普段のように気軽に風邪薬も飲めない身重なのだ。
これまで以上にもっと自分の体を大事にしなくてはいけない。今は、私だけの体ではないから。
「でも、ちょうど良かった。明日でもいいかと思ったけど」
そう言った晶さんは「ちょっと待ってて」とひとりリビングを出ていく。
どうしたのだろうと思いながら手元に置いていたスマートフォンを見ると、時刻は九時半を回っていた。今日も残業が大変だったのだろうと帰宅時刻で察する。
夕食を出そうとソファを立ち上がったところで、晶さんがリビングへと戻ってきた。
その手には、三十センチ四方程度のラッピングされた箱を持っている。
晶さんは私の目の前までやってきて、その箱を黙って差し出した。