外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「こんにちは。今日はどのようなご用件で?」
肩下セミロングのゆるふわなブラウンヘアの女性は、私と同じ日本人女性のようだ。
ブラックのタイトスカートが映えるしなやかな脚に、私が絶対に履かないピンヒールのパンプスを当たり前に履きこなしているのが格好いい。
私だったらあんな風にサクサク歩けず、ぐきっと足首を捻ってしまう。
目の前で対面するときっちりと完璧なメイクをしていて、できる女のオーラをビンビンに放っていた。
「あ、えっと、盗難に遭いまして……」
「届の作成ということで?」
「ああ、はい、そうです」
事務的な対応に緊張は落ち着いていくものの、笑顔のない真面目な姿勢は温かみが欠けてどこか寂しくも感じる。自分が傷心中だから余計そう感じるのだろうけど。
「お待たせしました。こちらが盗難届になります。被害に遭われた物というのは……?」
「カメラです。一眼レフの」
「カメラ。パスポートなどの貴重品ではないのですね?」
「はい。それは大丈夫で──」
窓口でそんなやり取りをしていた時だった。対応してくれている女性の向こうに人影が現れ、「小阪」と声をかけた。
あっ……。