外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
目にした姿に釘付けにさせられる。
瞬きも忘れてじっと凝視している間に、彼は「代わろう」と彼女に声をかけた。
「何かあった?」
「小阪宛てに電話だ。先日の件で弁護士から」
「ああ、じゃあお願い」
知らせを受けた女性は私に、「代わりますね」と言って窓口を離れていく。
その姿を見送っていると、目の前で「盗難、か……」と呟かれた。
ハッとして対面する彼に目を向け、改めてじっと観察する。やっぱり、間違いない。
「あの、さっき……」
「先ほどはどうも」
彼のほうも私のことを覚えていたらしく、これが再会だと証明する言い方をする。
まさかこんなところでまた会うなんて思いもしなかった。
「治安は悪くない国ですが、なんて言った矢先でしたね」
別れ際、確かそんなことを言われた覚えがある。
「作成のお手伝いをします。こちらへどうぞ」
窓口からすぐの応接スペースに案内され、「どうぞ、お掛けください」と着席を促される。
「担当します、大河内です」
「あ、はい。よろしくお願いします」