外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「あ、それは、そうなんですけど……。いや、でも、今回メインで使っている機材は無事で、無くなったのは私の趣味で使っているようなカメラなので、その辺は全然!」
正面からじっと見つめてくる大河内さんの目が私の隠している心境を見透かしているように思えて、私の説明はペラペラと無駄に早口になる。
間が持たなくなり、出されたペンを手に取り書面に視線を落とした。
「そうですか。無事に見つかればいいですが、こういった被害の物品は出てくることが少ないので」
そんな事情を知らされて、書面から思わず顔を上げる。あからさまにショックが顔に出てしまったことに動揺し、鼓動が早くなるのを感じた。
「ですよね。仕方ないです」
取り繕いながらも〝やっぱりそうなんだ……〟と落胆する。
高価なカメラということもあるけれど、それだけならまた仕事を頑張って買い直せばいいというだけ。
だけど、それだけじゃないからこれだけ落ち込んでいる。
あのカメラは、これまでたくさんの撮影をしてきた相棒であり、数々の思い出がある。それに、そこにつけていたストラップはプレゼントでもらった大切なものだったのだ。
お金を出せばどうにかなるものではないものを失った喪失感は大きすぎる。