外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「でも、わかりませんから。盗難届を提出して、もしかしたら見つかるかもしれない」

「はい。ありがとうございます」

「では、こちらに盗難に遭った場所と、時間帯を書いていただきます。宿泊中のホテルの名前で構いません。その下に個人情報を──」


 初めて書く盗難届の記入方法をひとつずつ教えてもらいながら、わかる範囲で書き込んでいく。

 大河内さんは仕上がった書類を上からざっと読み直し、「では」と届をテーブルの上ですっと滑らせた。


「書類はこれで不備はないので、警察のほうへ提出してください。それから、帰国はいつ頃になりますか?」

「帰国は、五日後の予定です」

「五日後、わかりました。その日までに盗品が返還されれば良いのですが、嘉門さんが帰国後に見つかるようなことがあれば、こちらで対応させていただきます。うちのほうで情報を保管させていただくために、この書類もご記入いただけますか」

「あ、はい。わかりました」


 望みは薄いかもしれないけれど、しばらくして見つかった場合も対応してもらえるとわかり、わずかながらホッと安堵する。

 必要事項を書き終えると、内容を確認した大河内さんが「では、こちらでお預かりします」と書類を受け取った。

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