外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「あの、この辺りでおすすめのお店ってありますか?」
「おすすめの店、というのは?」
あ……唐突すぎた。
「お昼会った時に、ホットサンドが美味しいって教えてくれたじゃないですか。そういうおすすめがあれば教えてもらいたいなって」
「ああ。どうでしたか?」
「え、あっ、はい! 美味しかったです。鶏がジューシーで、すごく」
そう答えつつ、本当のところ、実はあまり食べた心地のしないランチだった。
お昼を取ろうと戻ったホテルでは、警察が来ている騒ぎ。
事情聴取などを受け、その後、大使館に向かう前に思い出したように食べたのだ。
チキンがジューシーだったのは感じたけれど、じっくり味わって食べることは叶わなかった。
だけど、せっかく教えてもらった手前、あまり味わって食べられなかったとは言いにくい。
「なので、またレストランでも、テイクアウトでもいいので教えていただけたらなって。きっとお詳しいでしょうし」
「それなら、いいところがあります」
「ほんとですか? それはぜひ!」
即答で返ってきた言葉に勢いよく食いつく。
すると大河内さんはなぜだかフッと笑い、「では、行きましょう」と歩き始めた。