外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「助かります。ありがとうございます」
「いえ。知り合いのレストランなのですが、私も顔を出そうと思っていて、まだ伺えていなかった店で。ひとりで行くのも雰囲気に場違いなところなので、同行してもらえて逆に助かります」
広場を出たところで、大河内さんはボディに〝TAXI〟と書いてある流しのタクシーを捕まえる。
先に乗るように促され、言われるがままタクシーに乗車した。
「あの、大河内さん」
今の話を聞いて途端に落ち着かなくなった私は、タクシーが発車したと同時に後部シートのとなりに掛ける大河内さんに体を向ける。
軽い気持ちで何かおすすめのお店を紹介してもらえたらと、そういうつもりでした質問だった。
それなのに、どうやら『一緒に食事をしませんか?』というニュアンスに大河内さんを勘違いさせてしまったらしい。
見ず知らずの私なんかと食事なんて行きたいわけがないのに、外交官という職業柄の親切だろうか。