外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
陽が落ち始め、紫色に変化していく空にはピンク色の夕陽が溶けるように淡く輝きを放っていて美しい。
真っ青な海と幻想的な夕陽のコントラストに見惚れているうち、スタッフと話していた大河内さんが「嘉門さん」と私を呼びかける。
スタッフに席へと案内されていく大河内さんのあとに続き、二階デッキ席へと向かった。目の前に広がる海が開放的で、風が気持ちいい席だ。
「あの、お店の方って……?」
「ええ、経営者は日本人のご夫婦なんですよ」
案内をしてくれた男性スタッフが、大河内さんと日本語でやり取りをし、私にも「こちらの席へ」と笑顔で接客してくれた。
日本人?と思って訊いてみると、やはりそうだったようだ。
「日本で早期退職をされて、こっちに来てご夫婦でレストラン経営を始められたんです。新婚生活で来たモルディブが忘れられなくて、いつかふたりでこの国でお店を始めたいと」
「へぇ……素敵ですね。夢が叶ったんだ」
「そうですね」
「あ、それでお知り合いだったんですか?」
「まぁ、そんなところですね。開業する際に手続き等のお手伝いをさせていただきました」