過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「これは、収益を重視したものじゃない」

テーブルに置いていた写真を再びに手にした拓斗は、打って変わって優しげに目を細めた。さっきまでとは違う柔らかな表情に、思わず見入ってしまう。

外では決して見せないような気の張らない彼の表情を見られるのは、私だけなのかもしれない。妻となった私の横だからそんな表情も見せているのかと、少しだけ自惚れてしまう。

「俺の理想を追い求めたいだけなんだ。もちろんボランティアではないし、人を雇うからには赤字を出すわけにはいかないが」

以前彼に、『君のデザインはアローズの色ではない』と言われたことを思い出していた。それは私が実力不足であるとやんわり指摘されたと捉えていたが、もしかしてそうではないのかもしれない。

「その理想の実現には、美香が欠かせない」

私の見つめる先と拓斗のそれは、同じなのかもしれない。
森の奥の教会で、本当に親しい人だけを招いた結婚式は私の憧れそのものでもある。
自由にデザインを考えているときのイメージは、いつだって幼い頃に体験した世界観だ。きっと拓斗も、それを求めている。

正直、アローズのような豪華な結婚式にふさわしいデザインは、それほど得意ではない。でも、この拓斗の追及する理想には応えられるかもしれない。

「それなら、微力ながらあなたの力になれるかもしれないですね」
「微力なものか。これは美香がいて初めて成立するのだから」

きっと励ましも込めた言葉なのだろう。でも、拓斗の言葉なら素直に受け入れられそうだ。

「ありがとう」

拓斗は再び私を抱きしめてくれた。

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