過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
数日後、拓斗から説明を受けていた通り、彼の事業に携わる人たちと顔合わせをした。事務所は、マンションからふた駅行った場所にあるビルのワンフロアだ。接客スペースは別の部屋となる。
広くはないものの、社員数がわずか十数人という規模にはちょうどよい。他にも、数名の非常勤スタッフがいるようだが、紹介はおいおいにとなった。

常勤の社員のひとりは、もちろんここの代表を務める拓斗だ。あとは副社長の米沢(よねざわ)をはじめ、経理、広報、営業など数人とドレスを担当する私だ。気さくな人たちばかりで、ほっとした。
指揮は拓斗がとるものの、彼にはアローズの副社長の仕事がある。そのため、実質は米沢副社長がここを取り仕切ると説明された。

拓斗によると、事業が完全に軌道に乗ったら米沢を社長にして、すべての権限を託す予定でいるようだ。彼にとっての目標は、あの教会での式を実現すること。さすがにアローズの仕事もあるため、それ以降は任せていくようだ。

現段階は先行して集められたていた社員と非常勤のスタッフによって、ブライダルのプロデュースを行っている。朔也の勤めているエテルナとほぼ同じ内容だ。
拓斗によると、アローズのつながりもあって依頼はそれなりに入っており、徐々に売り上げを伸ばせているようだ。そこで評判を広めて、いずれ独自の式場の提供やオリジナルのオーダードレスの採用へと移行させていくように計画されている。


「ル・ジャルダン・スクレ?」

拓斗の立ち上げたウエディングプロデュース会社の名前だ。

「そう。フランス語で、秘密の庭という意味になる。まあ通称ジャルダンかな。長いと覚えてもらいづらいから」

それがあの森の教会を指しているだろうと、言われなくても想像できる。
拓斗は先日見せた写真の教会をすでに買い取っており、その改修も進められているという。

あの教会での結婚式をプロデュースすることこそが、この会社のメインの業務になっていく。もちろん、ゆくゆくは会場を増やしていきたいと、彼が楽しそうに話してくれた。
その姿は、この事業が決してアローズの片手間でないと伝わってくる。

「かわらしい名前ですね」

自分と大切な人たちしか知らない秘密の場所。あの教会には、そんな雰囲気がぴったりだ。素敵なネーミングだと思う。

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