過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「久々莉さん、お久しぶりです」
「久しぶりね、野々原さん。元気そうで安心したわ」

約一年ぶりに会う久々莉は、変わらず全身をモノトーンのコーディネートでまとめていた。今日はオフホワイトのカットソーにグレーのパンツというシンプルな装いなのに、変わらずどこか気品ある雰囲気が周りの目を惹きつけている。

「本当は、帰国してすぐにお会いして伝えるべきでしたが……久々莉さんにはずいぶん心配をかけてしまって本当にすみません」

店員が下がるのを待って、まずは謝罪をした。
きっと彼女は、私の考える以上に気遣ってくれたのだと、その表情から伝わってくる。

「謝る必要はないわ。私だって、もっとあなたと話すべきだったって後悔してるのよ」

朔也とまだ付き合っていた頃の話だろう。彼が他の女性といるところを見かけたと数回教えてくれたものの、久々莉がそれをしつこく言ってきたりどうすべきかと諭してきたりはしなかった。
おそらく彼女は、あの時点で浮気だとわかっていたのかもしれない。

「いえ。いろいろと見抜けなかった私にも問題があったんです。信頼し合っていると思ってたんですけどね」
「それでも、あの人のやり方はあまりにも卑怯だわ」

久々莉もまた、拓斗と同じように怒ってくれるのが嬉しくて、思わず笑みを浮かべた。

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