過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「久々莉さん、ありがとうございます。こんなふうに言ってくれる人がいるなんて、私、よい人に囲まれてるなって嬉しくなります」
「あら? 囲まれてるっていうのは、もしかして結婚した旦那様もその一員ってことかしら?」

〝旦那様〟だなんてわざとらしく言われて、思わず赤面した。
無意識に自ら拓斗の存在を仄めかすような言葉を選んでしまったと気づいて、妙に焦ってしまう。

「そ、そうなんですけど。フェリーチェの方でも、いろいろと話をしてきたみたいで……」

早口になる私を、久々莉がくすりと笑った。

「ええ。それはもう盛大な惚気というか、ねぇ」

意味深な流し目を送ってくる、茶化す気満々の元上司にいたたまれなくなり、思わず身を縮めた。

それにしても、拓斗は一体フェリーチェで何をしてきたというのだろうか? 気になるけれど、聞いてしまったら恥ずかしすぎて久々莉と目を合わすのですらためらってしまいそうだ。

「そ、そうですか」

これ以上、この件については何も言わない方がよいだろう。

「彼とは、うまくいっているみたいね」
「はい。大事にしてもらっています」
「彼、あなたにベタ惚れって感じだったもの」

それは違うとわかっていても、言えなかった。
いかにして私を悪者にしないか。私の名誉を守るためにはどう動けばよいのか。拓斗はそう考えて効果的に動いたにすぎないのだと思う。
惚れているのかいないのか、という話ではない。夫婦として、相手の身を守るのは自身を守ることにもなるのだから、拓斗がそう動くのは当然だ。だから、久々莉の言うような〝ベタ惚れ〟というのはまったく違う。

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